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幸せな貧乏人 ②

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幸せな貧乏人 ②

 それが長じて後、どうなったか、ですね。僕は何も隠す必要はなく、正直にお伝えしようと思いますが、AFSでアメリカへ留学した頃から山本家の運勢が変わり始めたのです。兄貴は一ツ橋に、弟は千葉大医学部に、そして僕は国際基督教大学に進学しました。8年間、卒業せずにぶらぶらしていた時にも、僕の身を案ずるような両親の言葉は一回も聞いたことがありません。家に帰るたびに、僕は何となくほっとしていたものです。

 両親のこの態度はどうして可能だったのか、今の僕には見当もつきません。今の僕はかつての父親がそうだったように、貧乏のどん底にいるのですから。勤めてはいますが、わずかな年金で暮らしています。

 しかし、社内の雰囲気はじめじめとした陰鬱なものではなく、颯爽としているのです! 笑顔が絶えません。一体どうしたらそうなるのかと、教えてもらいたいほどです。両親が“あの時”どのように感じていたのか、わかればいいのですが。

 そして僕は53歳で北海道へ移って以来、生まれて初めての事業に手を伸ばし、大金を借金してしまいました。しかし同時に、僕も大勢の方にお金を貸しています。全額で3000万ほどでしょうか。ただし僕の場合は、返していただいたお金はほとんどありません。僕に借りに来る方は御羽打ち枯らした人々であり、それに僕はお金は上げたものと考えています。だけど、その考えが危険だとは思いもしませんでした。やはり本筋は異なった信条の元で動いているのでしょう。

 僕は実は、自分が返済する側になろうとは考えていなかったのです。貸すだけなのだから、僕の好きにやっていいだろう、と。人生は不思議ですね。何が良くて何が悪いのか、その時点ではわからないのですから。良いと思って始めたことが最悪の結果を招くことがあれば、その逆もある。僕は今、必死で足掻いています。家内も必死、柏艪舎も必死です。このまま泥沼に引きずり込まれてしまうのか、あるいは窮余の一策が通じるのか。

 僕は意に反してご迷惑をおかけしている方々に申し上げたいと思います。僕は返済を絶対に諦めません。そして今回、自分のオリジナル作品で最後の挑戦に打って出ることにしました。この30年ほどに書いた作品が30作ほどあります。どれを読んでも、僕は面白いと思います。

それらの作品を2か月に1冊の予定でご皆様に紹介します。現在40冊ですから、期間は5年ありますね。その間に、僕は作品をもっともっと書いてゆくつもりです。柏艪舎ももちろん頑張ります。どうか皆さん、お元気で、今少しの辛抱をお願いするしだいです。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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