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夏の思い出 #1

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夏の思い出 #1

 北海道の夏はもう終わりですね。でも僕の故郷、神奈川県の逗子ではまだ残暑厳しく、誰も夏が終わったなんて口にする人はいないでしょう。これはその頃の話です。テーマは「水泳」。

 僕は小学生の6年生で、毎日のように海へ泳ぎに行っていました。他に遊びがなかったのですから、それがまあ当然でしょう。当時の僕は全く不思議に思わなかったのですが、海岸線の真ん中が百メートルばかりロープで区切られているのです。海岸線の真ん中には「逗子なぎさホテル」があり、その前方の浜辺、横に百メートルほどがアメリカ人専用になっていたのです。

 二本の太いロープがその百メートルを際立たせて、そのまま海上を遠くまで伸びているのです。僕はそのロープに掴まって泳いでいました。白い褌姿で、身体は日に焼けて真っ黒、今考えれば、いかにも占領地の土民と言う感じでした。左右百メートルの浜辺には外国人の姿は一組か二組しかなく、その両側の海域は日本人が溢れ返っています。そんな異常な光景に何の反応もなかった僕は、やはりどうかしていたのでしょう。

 ぼんやりとその光景に見入っていた僕は、いきなり左腰に衝撃を覚えました。つねられたとか殴られたとか、いろいろな言い方がありますが、僕には衝撃としか言えないようなショックでした。大型の、電気クラゲです! 腰に触り、顔を洗ったところ、いく筋もの痛みが顔中に走ります。僕は急いで浜に上がり、腰を調べてみると、褌に絡んだ皮膚がすでに赤く腫れてきているではありませんか。

 僕は褌を外して何度も洗浄したものの、痛みは増すばかり。僕は泣きながら家まで戻りました。腫れは一週間以上も続き、その痕は今でも残っているのです! それは僕の夏の海の、唯一の記憶に残る出来事し言ってもいいのかもしれません。何しろその後、僕はほとんど逗子の海岸で泳いだ覚えがないのです。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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