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恐山の魅力 ①

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恐山の魅力 ①

 今度は「恐山」について話ましょう。皆さんは、下北半島にある恐山に行ったことはおありですか? あるいは、そこへもう一度行きたいと思われますか? 僕はもう5回近く行っています。とにかく、あの山の雰囲気が好きなのです。

 もう何年前になるでしょうか、僕が最初に訪れたのは? それはバイクで北海道へ行った、帰りのことです。とにかく走ることが好きだった僕は、時々、函館-青森ではなく、函館-大間間のフェリーに乗ったのです。当時は、北海道から大間へ入ったとたんに道路が狭くなり、押し迫ってくる家々に押し潰されるように感じながら、150キロほど南の青森を目指して走ったものでした。

 そして途中に恐山があったのです。僕にとって、それまでは恐山など遠くの別世界にあるもので、とても実際に行けるところではないだろうという思いがあったのです。恐山があると分かった瞬間に、僕は絶対に寄らなければと思いました。このチャンスを逃してはならない。

 道をそれ、やがて恐山にたどり着きました。普段はどうなのかわかりませんが、広い駐車場に人っ子一人いないのです。潜り戸を開けて中へ入りました。いろいろな建物が並んでいます。どうやら、シーズン中には例の“いたこ”がいて、結構賑わうらしいです。やがて荒涼とした山道に差し掛かりました。木が生えておらず、あちこちで風車がわびし気に舞っており、硫黄の黄色い噴出口がいたるところに見受けられます。

 やがて小さな湖に着きました。僕はあれほどに静寂で、音もなく、それでいて我が身を委ねられるような場所には来たことがないと感じました。名称は「極楽浜」。浜辺にも湖にも、人間の気配がまったくしないのです。僕はその時、思いました。ここで死ねたらどんなに素敵だろうと。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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