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健康の代償 ②

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健康の代償 ②

 そう考えてくると、僕は病気にならなかった分、人生さまざまな問題で苦労するのではないか、という気がするのです。みなさんはどう思われますか? 僕はなんとなく、その考えがあっているような気がしてならないのです。そうなると、健康であることにも、ある程度のうしろめたさを覚えざるを得なくなる。まったく困ったものです。

 そして78歳のときに、再度糖尿病による脳梗塞で入院したのです。この時は自分でも少しおかしいなと思っていたので、意識がなくなるとすぐに病院へ運ばれ、3週間入院しました。これは実に本物の糖尿病で、会社の不振と重なってかなり深刻なものでした。そのようなわけで、僕は最初に病気に見舞われたのは78歳のときだと考えているのですが、間違っているでしょうか?

 78歳の脳梗塞の時は、仕事上の自分たちのミスという自分でもはっきりとわかる理由があり、退院後は病気前よりずっと健康になったような気がしています。まあ、11種類の薬を毎日飲むように言われ、それをきちんと守っているのですから、それも当然と言えるかもしれません。

 しかしこうして再び健康体になり、今度は気を付けようと考えている僕は、次回の、おそらくは命取りになる病気とはどんなものだろうという気になります。夜寝て、次の日の朝には死んでいた、というような幸せな方もいることでしよう。僕がどうなるかはわかりません。どうせなら、病床で長く苦しむというような真似だけはしたくないと思っているのですが。

 しかし、僕には将来のあれこれを考えて落ち込むということがほとんどありません。人の人生は500年と考えている僕にとって、人間一人の一生がどのように終わるかはさほど問題ではないのです。人間は500年を生きる。そして自分が今500年のどの辺りにいるのかわからない。人が死んだら、あとは何もなしと考えるのではなく、多くの人が人種と性別を越えて、500年の内の次の人生のスタートラインに立つのです。それが果たして輝かしき未来なのか、汚辱に満ちたものなのか、それは誰にもわかりません。また、500年後の自分がどうなるかもわからず、だからこそ、人の誕生はあのように多くの人々によって祝福されるのではないでしょうか。

 僕はこれまでに、人生500年などという話を聞いたことすらありません。したがってこれは僕の“作り話”なのですが、その判断の甘さを別にして、僕にはどうしてもそのように思えてならないのです。どなたか、ご意見をお聞かせ下さったら感謝いたします。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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